T君が私のいたホテルに来た時、確か25歳だったと思う。髪の毛は短髪のツンツン頭。顔はサービスマンの柔和な表情を作るには最も難しいだろうと思える造作。おまけにしゃべりは「早口」「ぶっきらぼう」。総支配人からの配属指示は「フロントでお願いします」
正直途方に暮れた・・・・・・サービス業が初めてなのは全然気にならない。人物がすべてだから。
取り敢えずすぐお客様にアテンドして貰うわけにもいかず、研修と称しナイトクラブへ入ってもらった。その間必死に長所を探した。
意外だったのは、外見から想像しずらいが非常にまじめだった。決して積極的にまじめだとか、堅物だとかではない。唯単に「まじめ」なだけだが・・・・
そんなT君だが、フロントの人数が圧倒的に不足していたので、わずか2週間程で現場に出さなくてはいけなくなった。当面私が教えられることは全て教え、無理だとわかっていても、笑顔の作り方や、絶対に出来ないと知ってはいたがフロントマンに必要な所作も教えた。
初出勤当日。想像以上の衝撃だった・・・・・・・・・・・・思い出したくないほど・・・・・・・・
当然と言えば当然だが・・・彼が悪いわけでは決してない。すべては教えきれずに現場に出した私が悪いのだ。
当時のそのホテルは、チェックアウトやチェックイン時は、都内の飲食店のランチタイムに匹敵するほどの混雑ぶりだった。テンパラない方がどうかしている。
お客様に観光場所を聞かれ「僕はわかりませんので、あっちの方で聞いて下さい」と逆切れ気味でお客様に言おうが、トイレの場所をご案内する時にジャイアント馬場さん並みの「逆水平チョップ」かと見間違うような手の動きをしようが、みんな私のせいだ。
でも、繰り返すがT君は「まじめ」だった。まじめに逆切れを繰り返した。まじめに逆水平チョップを日々繰り出し続けた。
そんな彼だが、ある日「かっこいいフロントマン」になりたくなったようだ。そのためにはもっと頭に余裕を作りたい→その為には仕事を覚えなければならない→その為には聞かなければならない
という彼なりの3段論法で「まじめに」勉強し始めた。質問が増えた。
今現在彼は同じホテルで、実質のフロントの責任者をやっている。仕事も楽しそうだ。
だからサービスの仕事は止められない。
引越し先です!
2009年9月28日月曜日
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こちらにもお邪魔します。
返信削除長年の謎が解けました。
口コミの返事が、宿の顔であるように
それ以上に、フロント、電話という
宿の心臓部のようなところに、
不慣れな人がいることに
疑問を感じることがありました。
なぜ、そのような人選がされるのかなと。
フロント、代表電話応対というのは、
何年かの経験を経て、配属されるものと思っておりました。
「現場で鍛える」という考え方もあると思うのですが、
そのような主要部に新人を配置するという
トップの意識の表れに感じていました。
>「僕はわかりませんので、あっちの方で聞いて下さい」
こんなことに遭遇してしまったら、何も言いませんが、
心の中でダメだしをしてしまいます。
基本的な言葉使い、敬語が使えない人材が、
主要部を担っている。
それは、ホテルの意識に思ってました。
それ以前に、基本的な会話のできない人材を
ホテルマンとして採用したというホテルの人選まで、
疑ってしまいました。
だれにでも初めてはあるけれど、
それは他所である程度トレーニングを積み、
ホテルの顔となる部分で、
このような物言いを聞かされては、
ホテル全体の印象が下がってしまいます。
裏を返せば、ホテルの顔がこの程度でいいと思っている。
ということだと。
でも、いきなりフロントという経験をつみながら、
立派にフロントの責任者を勤められるまでに
成長されたのですね。
磨けば光る原石を見抜いての配置?
それともう一つ、地方では人材不足という
問題も抱えているという現状を知りました。
T君が
ある日「かっこいいフロントマン」になりたくなった
という裏にどんなエピソードがあったのか
知りたくなりました。
きっと、のっぽさんの後ろ姿が、
そう思わせたのでしょうね(笑)